フミキリ

シリーズもの異端見聞録

「なんでそんなことに?」
俺が聞き返すと、少年麻都は暗い顔になって俯いた。
「僕のせいなんです…」
「麻都……くんの?」
少年時代のあいつにとはいえ、麻都にくんとか付けるのは気持ち悪いな。
「…教室でコックリさんをやってたんです、牧野と。そしたら何かが本当に降りてきて、牧野が10円玉から指を離したら、突然煙みたいにふっと消えちゃって…」
……ん?なんか聞いたことある。
まだ記憶は霞がかった感じでよく思い出せない。ん~なんだっけ?
「神隠しか、狐隠しにあったみたいで…」
…狐隠し!
ここら一帯を守っている神様がお稲荷様なこともあって、俺らは小さい時大人達に「悪いことしたらお狐様に連れていかれるぞ」と言われていた。
そう、それ。
俺は確か…
「ランドセルも靴もそのままで、いなくなっちゃったんだ」
そう、狐隠しに遭ったんだ。
俺が思い出して頷いていると、少年麻都が凄く辛そうな顔をし始めた。唇まで噛み締めて、悔しそうに。
「…悪いことしたのは僕なのに。…やっちゃいけないコックリさんに誘ったのは僕なのに。あいつは巻き込まれただけなのに…!」
気付いたら、少年麻都の目からボタボタと涙が零れていた。
え、おいおい、泣く程のことか?……泣く程のこと、なのか…。
最初見たとき大人っぽいとか思ったけど…そうだよな、小学生なんだよな、こいつは。
…よし!
「コックリさんをやってたんだよな?」
「あ、はい」
ゴシゴシと手の甲で涙を拭いている少年麻都の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「それならきっと狐隠しだ。神社の周りは探したか?」
「まだです」
「神社の裏山辺りにいるに違いない。行こう!」
少しぽかんとしていたが、だんだんと少年麻都の顔が明るくなった。
「はい!」
何がなんだか分からないけど、とりあえず、少年時代の俺は助けておかないと。元の世界に戻るのは、それから考えてもいいだろ。
俺は少年麻都を従え、上着とマフラーを抱えて、神社の方へ走り出した。
神社は例の踏切から少し遠く感じるところ、小学校のすぐ側の少し高台になった上にぽつんとある。ちょうど俺等が住む街全体を見渡せる感じ。
小学生の頃は神社が近かったから、境内や裏山でよく遊んでいた。どろけいやったり、秘密基地作ったり。
中学に上がると、中学校の校舎と小学校が結構離れているので神社に行く機会も減ってしまっていた。
行くこと自体久々だ。まぁ、今の神社がどうなってるか分からんけど。
「司、いなかったらどうしよう…」
神社へ向かう道中、少年麻都がそう言った。
そう言えば、昔は名前で呼び合っていたんだっけ。いつからだろう、名字で呼ぶようになったのは。
「大丈夫だろ。きっとお稲荷様は、悪いことしたお前に反省させたかっただけだよ。だからお前を困らせたんだ。もうしっかり反省してるんだろ?それなら絶対見つかるさ」
…なんてね。
でも、今思えば、ホントにその為に俺を狐隠ししたような気がするんだよね。
昔の麻都は危ないこと、禁じられていることを平然とやっていた。いつも一緒にいた俺はいつも冷や冷やしてたなぁ。…しかし、俺はイイとばっちりだな、おい。
神社の境内は、記憶の中そのままだった。境内の裏手に裏山へ入る道がある。道と言っても、人一人が気を付けて通れるくらいのケモノ道。
記憶の中では、この道の奥に立っている大きな御神木の根元に俺が倒れていたはずだ。
聞いた記憶で、俺自身はさっぱり記憶がないので断言は出来ないのだけど。
夏の日で夕方の時間が長いとはいえ、だんだんと薄暗くなってきている。急がないと。
雑草、落ち葉、小枝。土の匂いと木の匂いの間を、俺と少年麻都はケモノ道を進んだ。

2007-02-08

黒い羊小屋

二次創作では「くろひつじ」名義で活動しています。

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