フミキリ

シリーズもの異端見聞録

「つかさー!どこだー!」
少年麻都は周りの細かい枝や草も気にとめず、叫びながら奥に進んで行く。
なんでそんなに必死なんだろう。俺は麻都がいなくなったら、こんなに必死に探すだろうか?
奥の方に御神木と言われている樹が見えてきた。
物凄く大きな樹で、根っこだけで子供の背丈程はある。黒くて太い幹にはぐるりとしめ縄が巻いてあって、すごく分かりやすい。
その根っこの近くに、何かが転がっているのが見えた。
「!あれじゃないか?」
「ホントだ!いた!司っ!つかさ!」
御神木の周りは少し開けていて、ちいさな空き地のようになっていた。沢山の落ち葉が敷き詰められた地面に、昔の俺がいた。
麻都と一緒に駆け寄っていると、急に世界が暗くなり始めた。ちょっと待て、夏の夕陽はそんなに早く落ちないぞ!と思っている間にもまるで空中を墨汁が流れているかのように暗くなり、少年麻都の背中が見えなくなり始めた。
「ちょっと待て、何かおかしい!おい!」
そう叫んだが、少年麻都は消えて行くだけだった。
気付けば、俺は昔の俺が倒れていた場所に立っていた。目の前には大きな御神木。辺りはとっぷりと暮れていた。
陽が落ちたせいか分からないが、寒く感じる。とりあえず、と上着を着た。それでも寒くて、マフラーも巻いた。
一体全体どうなってるんだ?
そう思いながら御神木を見上げた。その時、
「牧野ー!」
遠くから声が聞こえる。麻都の声だ。
振り返ると、チラチラと黄色い光がだんだんと近づいて来るのが見えた。
「あ!やっぱり此処だった!牧野!!」
そう言って近づいてきた明かりは、麻都のペンライト。
いつもの見慣れた麻都がそこにいた。
「やっと見つけた。踏切渡って振り返ったら消えてるんだもん」
「麻都…」
やはり、俺はまったく別の次元に行っていたらしい。
それにしても、昔のようにこいつは俺を探し回るなんてなぁ。
「まったく…まさか二回も狐隠しに遭うなんて!お前ばっかりずるいぞ!」
ホントに、俺はこいつが良いヤツか悪いヤツか分からねぇ。

とりあえず、俺は家に帰ることにしたのだが、麻都はどうにも詳しく話を聞きたい、と俺の家に押し掛け、ちゃっかり飯も風呂もいただいて、俺の部屋にいた。
まぁ家は近所だし、昔から家族ぐるみで飯食ったり泊まりに行ったりとか普通だったから、別にいいんだけどね。
話を聞けば、俺がいなくなっていた時間は夕方から陽が暮れるまでの1時間弱。踏切を渡り切ったらいなくなっていて、昔のように狐隠しだと思い、すぐ神社に向かったらしい。
「で?昔は倒れていて、何も覚えてなかったみたいだけど、今回は記憶あるの?」
「うん」
俺は頷いて、昔の麻都に出会って、話をして、昔の俺を一緒に探しに行ったことを話した。
話し終えると、麻都はなんだか色んな記憶が繋がったかのように、大きく頷いていた。
「そっかー。昔お前がいなくなった時、誰かに逢ったはずなんだけど思い出せなくてさー。確かに今の牧野にそっくりの人だったわ」
「え。じゃあやっぱり俺は過去に行ったって事?」
「夏なのに長そでのシャツで、上着にマフラーまで持って、変な人だなぁと思ってた記憶があるしなぁ」
「…じゃあ、昔の俺を見つけだしたのは、未来の俺って事?」
「次元ってわけわかんないねぇ」
もし、俺が少年麻都を気にも止めていなかったら、どうなっていたのか。
「そっか…じゃああの言葉もお前が言ったことになるのか」
「あの言葉?」
「お稲荷様が、反省しろってことで俺を困らせたんだ、みたいな台詞」
「あー…」
「俺はソレを聞いて、危ない降霊術とかはもうやらないって決めたんだぞ」
「そうだったのか」
じゃあ、俺は良いことを言ったんだな。
その後の俺にとって、良いことを。
次の日。
なんでか麻都にずーっと付きまとわれて、帰りも結局一緒になった。
そして、例の踏切が近づいてきた場所で、俺は立ち止まった。
「どしたの?」
麻都が不思議そうな顔で俺を見た。多分、俺の顔はものすごく不機嫌な顔になっていたに違いない。
踏切の側に、あの赤い服の女が立っていた。
昨日と同じようないでたちで。
「もう一個の道から帰るぞ」
「え?なんで?遠回りになるよ?」
「なんでもだよ!」
俺はくるりと回れ右をして、もと来た道をまた歩く。
あの赤い女がいるうちは、あの踏切は使いたくない。
また別次元に飛ばされかねないからな。
しばらくしてあの赤い女はいなくなったが、それまでの間はかなりの遠回りで下校するはめになった。
あーもーホント、面倒だ。

…fin

2007-02-08

黒い羊小屋

二次創作では「くろひつじ」名義で活動しています。

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