狐雨

シリーズもの異端見聞録

人も車も通らない、やたら明るい雨の中、人の大きさほどの狐たちが、まるで人間のように着物を着て、歩いてたのだ。
き、狐の行列…。
かすり着物の狐たちが二匹並んで行儀良く、初めと終わりの分からぬ長さの行列を成していた。彼らはそれぞれ提灯や和楽器、反物など色々なものを持っていた。
多分真ん中ほどになるのだろう、白無垢姿の狐と、紋付き袴の狐が並んでいた。
一見、人間の行列のようだが、頭には大きな尖った耳、お尻のあたりからはふさふさの尻尾が伸びていた。
狐が二足歩行でいる時点でおかしいんだが、なんというか、兎に角デカいし、言葉も出なくって、公衆トイレの壁にもたれかかるくらいしか出来なかった。
不意に、太鼓の音が止まる。
鈴の音も。
歩みを進める狐の行列も、ピタリと止まった。
嫌な、予感がした。
いつもなら、車が嫌と言うほど通る道路なのに、車の来る気配はおろか、人の気配もないのだ。
あるのはただただ、明るい空の下に降り注ぐ雨と異様な狐の行列。
ざわっと鳥肌がたった。
狐たちが一斉に、ぐるんと此方を見たのだ。
糸目な狐たちの視線の先は分からない。が、顔は此方を向いていた。
あまりの恐ろしさに、膝からかくんと尻餅をついた。
…ヤバい。あれは、絶対ヤバい。
へたり込んだお陰で狐たちの姿は見えなくなった。だが、そこの通りにある気配は、分かる。
…ど、どうしよう…。
麻都の言うこときいときゃ良かった。
今更ながら、後悔。
と、その時。
「何してんの?」
「わあーーーーーーーっ!!!」
背後から聞こえた声に思わず、大声を上げた。
が、声の主を思いだし、はっとなる。
「あ、、、麻…都…?」
振り返れば、さっき学校に置いてけぼりにした麻都だった。
「え、おま…どうやって?」
「は?普通にそこの通りを歩いてきたけど?」
麻都が俺の背になる通りを指さした。
「え、だって、、、」
おそるおそる振り返って、通りを見た。
いつもの、車と人で少しだけ賑わう道があった。
「え…だって…さっきまで」
そう言えば、雨もいつの間にか止んでいる。
麻都の顔が嬉しそうにニヤついていた。
「だから、言ったでしょ?」
「え?あ?は?………夢?だって、さっきまで雨降ってて、果ての分からない行列が…ばかでっかい狐が着物着てて…こっち見て…」
呆然とした。だって、ホントのホントに見たんだぞ?さっきまで其処に、怖いくらいにずらぁって…。
「…牧野は狐の道に迷い込んだのさ。お狐様が行列なして通るための道にね」
「狐の道…?え、いや、そこの通りだったんだぞ?」
「この世とは少しズレた、同じ場所だけど、お化けじゃないと見えてない空間さ。天気雨はお狐様がお嫁入りの時降らせる雨。その雨の中でたまに狐の道への入り口が開いてしまう時があるんだって。牧野はその入り口を無意識に見つけて入っちゃったんだろ。それで狐様と同じ空間に立つ羽目になった……羨ましい」
「羨ましいわけがあるかぁ!!」
「花嫁さん綺麗だった?」
「見てねーよっ!糸目が一斉にこっち見たんだもん…恐ろしいったらありゃしねぇ」
「…これに懲りたら、僕の言うことはちゃんと聞こうね、牧野くん」
麻都の銀縁眼鏡がキラリと光ったような気がした。
たまに思うんだが、麻都って実はお化け…なのかな…?

fin

2007-01-22

黒い羊小屋

二次創作では「くろひつじ」名義で活動しています。

【詳細はこちら】

WEB拍手

感想などは以下のWEB拍手からお願いします。

【WEB拍手ボタン】

→拍手の返信はこちら