コトリの飼い方

ショートショート短編小説

「ねぇ、一つ頼みたいことがあるの」
付き合っている彼女がそう言った。
「私、明日から海外に仕事に行くのだけど、私のいない間、私の代わりにコトリの世話をしてくれないかしら?」
「コトリ?君飼っていたっけ?」
「えぇ。いつも一緒にいるの。淋しがり屋だから。でも仕事だし、コトリに構ってあげられないから」
「え、いつも一緒?」
「えぇ。今、私の肩にいるの。ほら、私のいない間、彼の言うことを聞くのよ?」
肩に向かってそう彼女が言う。
「え、ちょっと待って」
「今、貴方の肩に乗ってるでしょ?よろしくね」
彼女はそう言って帰ってしまった。
困った。
僕には彼女のいうコトリが見えていない。
どう世話をしたらいいんだ。
彼女が仕事で海外に行ってしまった3ヵ月間、彼女に頼まれたコトリの事、もしコトリが死んでしまっていたら彼女が泣いてしまうんじゃないかという事、そんなことを考えながら過ごした。
たまに電話でコトリの事を聞かれたが、元気だよ、としか答えられなかった。
そして、彼女が仕事から帰ってきた。
僕は彼女を空港まで迎えに行った。
「おかえり」
「ただいま」
「あ、あのさ」
「なに?」
「コ、コトリの事なんだけど…」
「うん」
「僕には最初からコトリなんて見えてないんだ。だから、その…」
僕がそう言うと、彼女はクスクス笑った。
「見えてるのに、気付いてないだけよ」
「え?」
「私の名前は?」
「ナルミ」
「漢字、思い出して」
「鳴海。…あ」
「ね?鳥がいるでしょう?」
彼女が笑う。
あぁ、そういうことか。
僕も一緒になって笑った。

2007-02-04

黒い羊小屋

二次創作では「くろひつじ」名義で活動しています。

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