一行怪談
10
夜中に子どもの描いたイラストが動き出す夢を見たと思ったのだが、翌朝リビングに真っ白な画用紙が散乱していたので、現実だったのだなぁと眠たい目を擦る。
9
朝から延々とインターホンを鳴らされて、イラつきながら玄関を開けると、ホッと胸を撫で下ろす自分がいた。
8
目の前の座席に座っている子どもが「この電車に乗ってる人達も一緒に?」と隣の母親らしき人物に聞くと、「ええ、そうよ」と少し悲しそうに、中からチクタクと時を刻む音の聞こえる大きな鞄を抱きしめた。
7
虹の根元を見つけたので掘ってみたら、金銀財宝がわんさか出て来るとこまでは覚えているのだが、その後誰に後頭部を殴られたのかは覚えていない。
6
電車の中で視線を感じてそちらを見たら、顔中血まみれの男が窓の向こうからこちらを見ていた。
5
SNSで仲良く話していた人と会うことになり、待ち合わせのカフェで通された席には、メッセージ送信画面に「こんにちは」と表示したスマートフォンが置いてあった。
4
混雑した電車の中、ぽっかり空いた一人分の座席を見つけたので座ってみたら、周囲の人間が一斉にそっぽを向いた。
3
血まみれのステップがぐるぐると回り続ける、どこに繋がっているのか分からないエスカレーターをジッと見つめている。
2
コレを飲めば大丈夫だと薬を渡されたが、渡してきた彼の目は紫色の渦を巻いており、どうしても飲む気になれない。
1
何者かが自分の布団の中に切り落とした愛犬の頭部を忍ばせる夢を見たが、この手に触れている生温かい感触が寝汗かどうか確かめられず、横になったままでいる。
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