散文
43枚め
風が騒ぐ。
春を起こそうと大騒ぎ。
時々目を覚ますけれど、すぐまた眠る。
何度寝したら起きるかしら。
◆
昔の私に会った。
「まだ、生きてる?」
「生きているよ、元気だよ」
「お金持ちになった?」
「残念ながら」
「有名になった?」
「残念ながら」
「じゃあ、幸せ?」
「勿論」
◆
手をぎゅっと握る。
暖かい。
生きている。
私は、生きている。
42枚め
心が揺れる
ふらふらふら
隙間があるのだ
いつ空いたのか分からない
隙間があるのだ
ぐらぐらぐら
心の真ん中
中心不明
何処へ行く?
迷子
ゆらゆらゆら
隙間を埋めたら良いのだろうか
息が詰まったりしませんか?
ふわふわふわ
何を詰めよう?
首がしまるほど?
綿ならば
ぎゅう―――――
41枚め
この大きな空でさえ、泣いたり笑ったりするんだよ。
この大きな大地でさえ、喜んだり怒ったりするんだよ。
こんなちっぽけな人間が、泣いたり笑ったり、喜んだり怒ったり、
そんなの当たり前じゃないか。
◆
辛かったね。
苦しかったね。
痛かったね。
寂しかったね。
怖かったね。
悲しかったね。
でも、幸せだったよね。
もう大丈夫だよ、
ゆっくりしてね。
おやすみなさい。
◆
何に絶望しているんだ。
何に悲嘆しているんだ。
何に叫喚しているんだ。
考えろ。考えろ。
「考えること」が出来ること。
それが余裕であり、幸福じゃないのかい?
40枚め
「頑張ったから、褒めて」
「頑張ればいいんでしょ?」
「頑張る」の意味、間違えていませんか?
自分の「意志」「我」を持って「努力」すること
目的達成のために「努力」すること
これらが「頑張る」の意味。
何も成していないのに、褒めてほしいなんてただの我がまま。
貴方、褒められたいからそんなことやってるの?
何の為に、そんなことしてるの?
‡
争いは「醜い」のではなく、「クダラナイ」のだ。
‡
「大人」は偉くなんかないよ、ただのポジション。
「子供」も同じ、ただのポジション。
順番は巡る。
社会的地位も、学力も、頭のよしあしも、全て同じ。
恒久的に続く世界ではないし、それを生かすも殺すも、盾にするも矛にするも、
すべてその人次第。
立場・ポジションなんて関係ないの。
その人が、何をするか・何をしたか、それが一番大事なこと。
39枚め
それは何処かから聞こえて来た歌声。
遠いようで近い声。
囁くように泣いている声。
ただ、私は待っていたの。
凍てつく世界の真ん中で。
私そのものが凍るまで。
歌うのは花。
雪の花。
解けない氷の世界で佇んでいた。
誰か見つけて。
世界が終わる前に。
世界が消える前に。
凍る花が歌うのは、求める歌。
何も求めない僕はどうして見つけたのか。
求めないはずはない。
真っ直ぐ一人で生きられる者などいないわ。
歌うのは雪の花。
僕の足元で歌う花。
◆
風が、呼んでる。
背中を押すように。
進め進めと叫んでる。
帆を広げ高くあげろと怒鳴ってる。
風が呼ぶなら応えなきゃ。
◆
遠くが見えたか?
道が見えたか?
それなら、踏み出すのは、今。
38枚め
世界が例えば、まるで合わせ鏡のように、同じような虚像が連なるものだとしたら。
世界が例えば、誰かが描いた書物の一冊に過ぎないとしたら。
世界が例えば、誰かが奏でる音楽の一小節に過ぎないとしたら。
今こうして生きている我々は、何処から来て、何処へ向かうのだろう。
◆
世界は緩やかに流れているから、焦らなくてもいいんだよ。
◆
時間は追い掛けない。
自分を追い掛けているのは、理想の自分。
37枚め
人間は複雑な多面体だから、見えないところもあるし、デコボコしてるし、転がったらかくかくしながらあちこちにぶつかって進むんだ。
後戻りなんかしないし、出来ないんだ。
生きる道を、角を丸くしながら、かくかくことこと転がっていく。
◆
器が、あって、
僕らは毎日拾ったモノをそこに入れる。
たまに起きる素敵なものはキラキラしていて、拾ったら幸せな気持ちになれる。
嫌な出来事も仕方なく拾う。
だってそれはやらなきゃいけないことだから。
やめることは出来るんだけど、やめたらきっとつまらない。
だから、やめられないんだよ、拾うこと。
ねぇ、君の器はどのくらいたまってる?
36枚め
縛りたい自分と縛られたい自分。
縛りたい相手も縛られたい相手もどちらもいないから、
自分で自分を縛って、自分で自分に縛られるの。
おかしくないよ。
滑稽なだけ。
妥当なだけ。
需要と供給がぐるりと円を描いただけ。
◆
自分が、大事。
ナルシストではありません。
他に大事なものが見つからないから
大事なものは全て自分が持っていたから
大事に大事にしてるだけ。
スキとかキライとかじゃなく、
大切なだけ。
それだけ。
◆
笑って、泣いて、
大きな声で。
ここにいるよ。
ここにいたんだよ。
叫んで、囁いて、
ホントの声で。
ここにいたね。
ここにいるからね。
35枚め
何かに溺れて
何かに縛られる
それが人間なら、
今の私はナニだろう。
◆
拾いあげたソレが、ナニものでもなかった。
その事実に私は落胆してるのかな。
拾いあげた事実を、受け止めて、愛しく思えたら、
ソレは価値ある何かを拾いあげた事と同等なのかな。
◆
世界の端っこ。
私はまだそんな所に立っている。
34枚め
紙で右手の薬指の先を切った
傷口を見ていたら、傷口から顔が出てきて
「おまえ、馬鹿だなぁ」
といった。
「うん、馬鹿だよ」
と答えたら、
顔は笑いながら傷口の中に引っ込んだ。
◆
「なんで生きてるの?」
と聞かれたから、
「潤されたいだけだよ」
と答えた。
◆
心の中に、ぎらぎらした太陽がいるみたい。
渇いて渇いて仕方ない。