短編小説/ミヤ氏の小噺
小噺12:ココロのカタチ
御無沙汰しております、ミヤでございます。
寒い季節もそろそろ終わり、暖かい季節が足音を立てている、そんな時季でございますね。
この時季は様々な事が終わりを告げ、新しい事が始まる時季でございます。
そのためでしょうか、緊張したり、不安になったり、悲しくなったり、嬉しくなったり、ココロが不安定になる、情緒不安定な方が多く見受けられます。
何故、こんな風にキモチがコロコロ変わってしまうのでしょうか?
何故、ココロが不安定になるのでしょうか?
何故、キモチを揺らがないようにしていられないのでしょうか?
考えた事はございますか?
「そんな季節だから」
「だって人間だもの」
いえいえ、それは答えではございません。
理由は、ココロのカタチにあるのです。
ココロとはどんなカタチをしているか、ご存知ですか?
上はまるで桃のように二つに膨らんで、下はまるで針のように細い、所謂「ハート」と呼ばれるカタチです。
実は、ココロは本当にこの「ハート」のカタチをしているんです。
正確にはこのカタチの器が、ココロのカタチなのです。
こんなカタチをした器ですから、中に「出来事」が入ってしまうと、針の先のような細い脚はぐらぐらグラグラ揺らいでしまうんですね。
だからとてもバランスの良い方でないと、ココロが揺らぐのを止める事は出来ないんです。
もちろん、身体的なバランスではなく、ココロのバランスです。
貴方がもし、ココロの揺らぎを止められず悩んでいましたら、ココロのカタチを思い出してください。
あの細い脚で揺らがないでいる事なんて無理、と納得する事ができるかもしれませんよ。
小噺11:深い話
貴方がこのタイトルを見て、もしタイトルの通りに思ったのなら、この話はその通りなのかもしれません。
もし、このタイトルが逆であったら?
貴方はいったいどんな思いでこの話を読むのでしょうか。
これは、音楽CDのジャケットなどだけを見て、そのCDを買う行為と近いかもしれません。
タイトルやジャケットなどだけを見て、想像や思い込み、勘違いから行動を起こしている、そんなところがよく似ています。
このような行動を起こした後の感情は、行動を起こした際、脳内にある記憶で随分と分かれるんだそうですよ。
では、貴方はこの話を読んだ後、どんな感情を抱くのでしょう。
私はそれが楽しみでなりません。
小噺10:シャッキン
貴方、シャッキンしてませんか?
してるでしょう?
え?してない?
本当に?
実は此処に貴方がこれまでに積み上げたシャッキンを記した帳簿があるんです。
これを見る限りですと、貴方随分借りてるみたいですよ?
身に覚えがない、そんな顔ですねぇ。
今もまさに借りようとしてるようですが…?
金融機関になんかいないって?
それはお金を借りるところでしょう。
私のいうシャッキンってのは、「借禁」、「禁忌を借りる」と書きます。
禁忌とは禁じられていること。
人間の人生において禁忌とは、何かを諦めたり後悔したり頑張らなかったりすること。
貴方が人生で諦めなかったことはありませんか?後悔は?途中で投げ出したり、頑張らなかったりしたことはありませんか?
思い当たる節があるようですねぇ。
人間にはあまり知られていないルールがあるんです。
目的は精一杯生きて何かを成す、もしくは何かを知る。
禁忌は諦めたり後悔したり頑張らないこと。
実はこの禁忌って本当は一度でも犯したらスタートに戻らなきゃいけないんですよ。
でも神様は優しいから、禁忌を借りればそのまま進んでもよい、そんなルールも用意してるのです。
それなら人間はずっと借りっ放しなんじゃないかって?
借禁は返済方法がきちんとあるんです。
それは頑張る事。
諦めた分頑張る事で借禁は減っていく。
人間は必ずシアワセになる権利を持って生まれてきているのですが、借禁がある間はその権利が使えなくなる。
義務を全うしてこその権利ってわけです。
借禁をしたまま死んだり、自殺してしまったら?
それは来世へ繰り越されます。
新しく生まれた貴方は借禁を背負った状態からスタートするんですよ。
嫌ならしっかりゴールまで進みましょう。
あぁ、貴方の借禁帳簿は大丈夫ですよ、誰にも見せていませんから。
あ、そこの身に覚えのある貴方、自分で帳簿を作ってご覧なさい。
結構貯まってますから、一度確認する事をお薦めします。
其れを見て精進してくださいませ。
小噺9:集団プレイ
この世はなんとも変態的な世界である。
貴方、緊縛プレイはお好きかな?
嫌い?
嘘おっしゃい。
人間てものは常に縛られて、喜びよがっているものなのですよ?
そんな変態じゃない?
…貴方、今だって縛られているじゃない。
朝は起きる、腹が減ったら食べる。
人間だから二足歩行で、社会の為に衣服着用。
生きてく為に働き、壁にかけたカレンダーのスケジュールに縛られている。
ね?
それにそもそも、魂が肉体に縛り付けられているじゃない。
毎日がSM的破廉恥なる緊縛の世界。
ね?
世界はなんて変態的に回っているんだろうとか、思わない?
小噺8:眼球
人間の眼球には、いくつか種類がある。
本当の美しさが分かる物、真実を見ぬける物、正しい道が見える物、様々である。
では何故、人間は本当の美しさも知らず、真実も見抜けず、愚かな道を進むのでしょう。
ご存知ではないようなので、教えてあげましょう。
実は、鏡に映る顔に二つほどはめられているソレは正しい意味の眼球ではない。
眼球はそれはそれはデリケートなため、顔にはめられている贋物の中、若しくは後ろに隠れているものである。
つまり眼球は、贋物というフィルターを通して世界を見据えており、真実は常に曇っているのです。
お分かりいただけたかな?
小噺7:ウサギ
どうも、ご無沙汰しております。ミヤでございます。
つい先日まで旅に出ておりまして、楽しんで来た次第でございます。
何処へ行ったかと申しますと、次元を越えた別世界の方まで足を運んでおりました。
またまた冗談を、とおっしゃいますか。
冗談ではありませんよ。
なにせウサギが案内役でしたからね。
ウサギとそれは別問題?
いえいえ、大有りですよ。
…もしかして、ご存知でない?
これは失礼。
ではウサギのお話を致しましょう。
ウサギとは古来より異次元を飛び越える能力を持っているのですよ。
ぴょんぴょん跳ねてる可愛い動物ってだけでは無いんですね。
ぴょんぴょん跳ねて、次元を飛び越えてしまうんですから。
その証拠に、「アリス」という少女が異世界を旅するあの有名なお話だって、水先案内はウサギだったでしょう?
昔話の「ウサギとカメ」も、実はウサギの奴、次元を越えてゴール近くまで飛んでいたのが本当の話。
それから、よく何かの儀式の生贄にはウサギが使われていると思うんですが、あれは実はウサギが本当にその神様のいる次元まで行くからなんですよ。
なんでウサギがそんな能力を持っているのかと申しますと、寂しがり屋だからです。
寂しくて仕方ない時、次元を飛び越えて友達に会いに行くために会得したんだそうです。
何せウサギは寂しいと死んでしまいますからね。
彼等にとっては死活問題なのです。
今でこそそんなに次元跳びをするウサギは見掛けませんが、ウサギを飼っていらっしゃる方々はどうぞお気を付けください。
気付いたら、次元を跳んでいなくなってしまうかもしれませんからね。
寂しくないようにしてあげれば、死から逃れる為に次元を越えたりはしませんよ。
お気を付けください。
小噺6:自殺の形
昨今話題に上がる「自殺」。
これが何故、流行っている、なんて言われているか、ご存知でしょうか。
確かに過剰なメデイア報道もまぁ原因ではあるのですが、あまり知られていない理由、これをお話いたしましょう。
まず、皆さんが「自殺」という言葉を聞いたとき、思い浮かぶ形、つまり死ぬ方法はなんでしょう?
飛び降りや薬、まぁ他にもあるでしょうが…「首吊り」が一番想像しやすく、分かりやすい「自殺の形」ではないでしょうか。
実は「自殺」が流行るのもこの形が原因なのです。
大きな樹の枝や柱から太めのロープを吊し、輪っかを作り、そこに首を通す。そして、そのまま、体重をかける。
これほどシンプルに「自分を殺す」方法もないでしょう。
昔、恐怖や暴力で統治していた人間は、法に背いた人間を逆さまに吊るし上げて広場に晒していたりしましたが、あれは足を上に向ける為に、自らを殺していたようには見えませんので、形は似ていますがお間違えの無いよう。
話がずれました。
そう、形。
一本のラインと一つの輪っか。
どこかで見た事ありません?
そう、催眠術なんかで、五円玉に紐を通して、目の前を右に左にゆーらゆら。
そうしてまやかしの夢を見る。
それと似た原理なのです。
「自殺」という言葉を目にする度、「自殺の形」を思い出す。
何度も何度も、何度も何度も。
それが同じような催眠効果を持つのです。
「自殺の形」は何ともシンプルですから、簡単に見えるのですよ。
実際簡単ですし。
そこに、現実への不満があれば、その簡単な逃げ道に行くでしょう。
実行する時は、半ばトリップ状態。
そして、あっさり首を吊る。
お分かり頂けたでしょうか?
この現代に蔓延る、不可思議な出来事の起因たるや。
そうそう、自殺をなさりたい方に、一つ御忠告を。
首吊りは、やめた方がいいですよ?
体内の内容物を全て垂れ流し、まして、舌は伸び切った、それはそれはひどい有様になりますからねぇ。
綺麗に死にたいなら、年齢を肌に重ねた「老衰」で安らかに死んだ方が、マシだとは思いますよ。
小噺5:マクラ
どうも、御無沙汰しております。
実はついこの間まで少々ひどい風邪をひいておりまして。
だいぶ良くなりまして、こうして皆様にお話出来る次第です。
風邪をひいた時、病気をした時はゆっくり眠るのが一番ですが。
さて、皆様ご存知ですか?
「マクラ」って実は充電器なんですよ。
ほら、そこ、「はぁ?」とか間の抜けた声を出さない。
本当なんですよ。
だって、皆さんもマクラに頭を預けて眠るでしょう?
そうやって眠って、次の日の朝にはしっかりと元気を充電されてることでしょう。
ちゃんと眠っているけど、ちっとも元気になれない、という方は、マクラが合って無い証拠です。
携帯電話の充電機だって、ちょっとずれちゃうと上手く充電されないでしょう?
それと同じです。
余談ですが、
妖怪に「枕返し」ってのがいますが、ご存知ですか?
夜中にこっそりマクラをひっくり返しに来る妖怪です。
こやつは、マクラが充電機なのを知っててやってるらしいですよ。
嫌なヤツもいたもんです。
なんだか寝付きが悪かった朝は、マクラか妖怪のせいにでもしてください。
少しは気が晴れるかもしれませんよ。
小噺4:砂時計
実は皆さん知っていて、知らないふりをしているお話。
皆さん、砂時計と呼ばれるものをお持ちですよね?
こう、トーメイのガラスで出来ていて、細長く、ちょうど真ん中辺りを誰かがつまんだような形をしたやつですよ。
おや、持っておいででない?
いやいや、皆さん、一人最低一つはお持ちですよ。
あぁ、ご自宅にある。それは二つ目と数えてください。
だって、自分の首の、髪の毛が生えている近く、頭と首の境目、うなじと呼ばれる場所にお持ちではないですか。
ふふ、知らないふりはやめてください。
あぁ、もしかして気付いておいでで無かったですか?
これは失礼。
何せ、よぉくよぉく目を凝らさねば見えぬほどに小さいものですものね。
たしか指の爪の先ほどでしたか。
この砂時計、その人が持っている寿命の時間分落ちるんだそうです。
逆さまになれば寿命が延びるのでは、と安易に考えた方がたまに逆立ちをしているようですが、無意味ですから。
その人の重心方向に落ちるのですよ。つまり逆立ちしても上に落ちるのです。
よく見てみたいなぁなんて、鏡を背にして首をひねっても見えたりはしないでしょう。なにせ小さい物ですから。
あぁ、でも見てみたいからと無理に首曲げて痛めないようにしてください。
その砂時計壊しちゃったり、落として失くしちゃったりしたら、命もつきますので。
首を折ると死んでしまいやすいのは、それを一緒に折ってしまうからだそうで。
何せ、細長くて脆いガラスで出来てますから。
皆さんもくれぐれもお気をつけください。
小噺3:コトノハ
あら、貴方、何か落としませんでした?
落としてない?
いえいえそんなはずはありませんよ。
今、確かに、落ちるオトがしました。
地面になど落ちていませんよ。
貴方は、今、
そこら辺の空に、
電波の先に、
次元の彼方に、
落としてますヨ、コトノハを。
コトノハはそれはまるで、
羽の様に軽やかに空へ落ち、
葉っぱの様にふらふらと落ち、
波の様に広がりながら落ちてゆきます。
ね?
貴方、今、落としたでしょう?
羽ばたくオトが、
葉擦れのオトが、
波打つオトが、
しましたから。
けれど気をつけてくださいね。
くれぐれも、ココロをエニシをスベテを切り裂くオトだけは、
たてないでくださいね。