短編小説/ショートショート

ひとりぼっち

ひとりぼっちが寂しいから、誰かと繋がろうと、インターネットで見つけた掲示板に書き込んだ。
「誰かお話しませんか」
メールがきた。
「お話しましょう」
他愛もない会話を続けた。
学校の事、家族の事、つまらない日常と、見えない未来のこと。
寂しくはなかった。
でも、つまらなかった。
そして、そのうち寂しさが増してきた。
インターネットで見つけた掲示板に書き込んだ。
「誰か遊びませんか」
何通もメールがきた。
「一緒に遊びましょう」
指定の場所にみんなで集まって、ご飯を食べて、他愛もない会話を続けた。
寂しくはなかった。
楽しかった。
でも、満たされなかった。
繋がったように見えただけで、繋がっていなかったんだ。
ひとりぼっちでわんわん泣いた。

2007-03-18

もっとも残虐な殺し方についての考察

この世で一番無残で残忍な、もっとも恐ろしい残虐な殺し方とはなんだろう。
死とは、全てに於ける希望を絶たれるもので、全てに於いて朽ちるのが普通である。
それを踏まえた上で、残虐な殺し方を考えると、どうなるのか。
よく、ホラー映画で手足を切断だの、鋼鉄の紐で縛り上げるだの、眼球に針を刺すだのあるが、それらはただ痛いだけで、残虐に見えるだけである。
恐ろしいとされる犯罪、殺し方は、一見残虐な、最終的に死を与えたものが該当するようだが、それは果たして本当の残虐な殺し方かどうか。
よくよく考えれば、死そのものは残虐な殺し方から遠くなる気がする。
何故なら死は肉体からの開放であり、脱出であるからだ。
殺すという行為は、死を与えることだが、肉体に死を与えては、相手を残虐な痛みから逃す事にはならないだろうか。
凄まじい暴行を与え続けると、人は死という開放を望む。
それは、希望を断つことが目的である殺戮から、離れている事になるだろう。
前述した通り、死とは、全てに於ける希望を絶たれるもので、全てに於いて朽ちるのが普通である。
卒ることは始まることであり、そこに微塵たりとも希望がないことは有り得ない。
ならば、もっとも残虐な殺し方はなんであろう。
私が思うに、生かす事であると考える。
終わりの知れない肉体への苦痛と、心に考える感情すらも砕く責め苦を与え続け、死という逃げ道すらをも断つ、それが一番残虐ではないだろうか。
しかし、ここには一つ穴がある。
壊れるという現象だ。
壊れてしまうと、あらゆる苦痛が快楽になり、それを楽しみ始める。
それはある種の逃げ道であるが、それを断つ手段はない。
「駄目だ。結論が出ない」
結論までしっかり書かなければならないレポートの提出期限は明日だ。
なぜこんなレポートを書き始めたんだ。
始めの方を読んでみる。
先日、母方の祖母がなくなりました。
死因は通り魔に刺され、出血多量。怒りを覚える死因です。
そしてこれを機に「死」とは何か、特に「殺す」という事について考えました。
理由にインパクト感じたからか。
それとも残虐な文章を書きたかったからか。
どちらにせよ、これじゃダメだ。

2007-03-15

雨の日の遊び方

雨の日には外に出て、アレを探す。
よぉく見ていないと見つからない。
空の彼方から落っこちて来るアレ。
おじいちゃんは
「ホントはみんな見えてるんだけど、気付いてないんだよ」
と言っていた。
名前は教えてくれなかった。
アレ、とだけ言っていた。
何なのか知りたくて、雨の日も晴れの日も外に出なかった私が、アレの正体を知りたくて、外に出ていくようなった。
外に出させる為の、おじいちゃんの嘘だったのかな。
でもあるような気がするんだ。
アレ、が。
たまにおじいちゃんと一緒に外に出て、アレを探した。
結構楽しかった。疲れたけど。
だから嘘でも本当でも、どっちでもいいんだ。
見つかっても見つからなくても良かったんだ。
雨の日には外に出て、アレを探す。
見つかっても、見つからなくても良いんだ。
いつまで経ってもアレが何か分からないけど。
それでいいんだ。

2007-03-14

キレイ

「キレイ」が好きだから「キレイ」だけを集めたの。
たくさんたくさん集めたの。
「キレイ」だけのはずなのに、ちっとも「キレイ」じゃなくなった。
私の「キレイ」は何処にいったんだろう。
「キレイ」の山を探してみたけど見つからない。
だから私は「キレイ」の山をまるごと捨ててやった。
あとに残った「キレイじゃない」山の中を探し回った。
そしたら、その奥底に「ホントのキレイ」が落ちていた。
よかった。
私はまだ「キレイ」になれる。

2007-03-13

ある夢の話

夢を見た。
真っ白な世界に大きな壁があった。
無性にその壁を壊したくなって、壁に近づいていった。
壁には大きく「夢」と書かれていた。
気にせず壁を殴り付けた。びくともしない。
今度は壁を蹴り付けた。壁の唸る音が聞こえた。
いける。
何度も何度も何度も何度も蹴り付けた。
そのうちヒビが入り、悲鳴がし、遂にはガラガラと音を立てて壁は崩れた。
よし!とガッツポーズをしたのもつかの間、壁の向こうから真っ黒い液体の波が押し寄せてきた。
ビックリしている間にコールタールのようにねっとりとした液体に飲み込まれた。
波に押しやられ、壁の穴をあけたところからだいぶ離された。
頭から液体を被ってしまい、真っ白い服は真っ黒になった。
なんなんだ、まったく。
纏わり付く液体のねっとりとした感覚が妙にリアルで、気持ち悪い。
水分を含んだ服が重い。
せっかくだ、穴の向こうへ行ってみよう。
重い服にふらふらしながら穴にたどり着いた。
少しばかり狭い穴をくぐり抜けると、そこには夜の街が広がっていた。
夜の街の空の上。
そこに立っていた。
上には星が瞬き、下には眠らない都会の明かりが灯っている。
穴の方を見ると、ぽっかり開いた穴の上に、「現実」と書かれていた。
なんの冗談だ。
それ以前にこれは夢だ。
悪い夢。
覚めれば、おしまい。
覚めろ覚めろ覚めろ覚めろ。
覚めない。なんで?
座り込む。
夢の中で眠れば覚めるはずだ。漫画で読んだことがある。
横になって目を閉じた。
暫くして目を開けたが、覚めてなかった。
朝になれば、覚めるよね。
夢の中の現実の空がだんだん白みはじめる。
あ、朝だ。
もうすぐ覚める、はず。
水平線に光の線が伸び、その真ん中から太陽がゆっくり昇り始めた。
朝だ。朝だよ。覚めろよ自分。
覚めない。
どうして?
わんわん泣いた。
目覚めない自分が怖い。夢が夢でなくなっている。
わんわん泣いて泣いて泣いた。
そんな夢を見た。
起き上がると、目の前の壁には相変わらず大きな「夢」の文字があって、憎たらしい。

2007-03-11

カラクリ

計11名もの男女を殺傷した通り魔が警察の徹底した調査と努力により、捕まった。
犯人はおっとりとした顔付きの垂れ目の女性であったが、捕まえた当初、「悪魔が私に命令をするの!」と喚きちらしていたそうだ。
精神鑑定や犯行当時の責任能力について様々な情報が飛び交い、メディアはこぞってこの事件を取り上げた。
11名の死傷者の中には中学生もおり、世論の流れは「死刑に値する有罪」であった。
しかし、最初の判決では「無罪」が確定。
たちどころにメディアが盛り上げ、裁判批判等で新聞各紙が仰々しく掲げるかと思いきや、まるで熱がすっかり冷めてしまったかのように、事件についての情報が消えた。
当初は様々などよめきが沸き起こったが、メディアが取り上げなくなったため、年月はあっと言う間に事件を風化した。
これはメディアに人心が右往左往と踊らされている事がよく分かる良い事例でもある。
かくして、事件より半世紀経ったある日、数枚の法廷画が発見される。
それは、その犯人の裁判の様子を描いたものだったが、犯人の部分は何故か赤いペンでぐちゃぐちゃになっていて、どのような姿かはっきりとしない。
その法廷画を描いた人物は、
「見たくなかった。描きたくなかった」
と告白。
彼の元妻によると、彼はその裁判から帰って来た夜、妻が大事にコレクションしていた人形達を半狂乱になりながら叩き壊したらしい。
それが原因で二人は別れたそうだが、元妻はその時の様子をこのように証言している。
「彼はまるで人形を悪魔を見るような目で見つめていたわ。すっかり怯えているようだった。小さい犬が大きな犬を見て吠えるような、そんな光景だったわ」
犯人は無罪放免となったが、何処で何をしているかは、定かではない。

2007-03-09

ある夜の話

真夜中に目を醒ました。
急にトイレに行きたくなったからだ。
ふらふらと薄暗い室内を移動して、トイレで用を足す。
それから眠い目を擦りながらベッドに戻ろうとすると、ベッドに人が寝ていた。
え?誰だ?!
ってか、俺のベッドに勝手に入りやがって!
吃驚したり、怒ったりしていると、ベッドに寝ていたそいつが顔をこちらに向けた。
俺だった。
なんだ、俺か。
手洗ったか?と聞かれ、うん洗ったよ、と答えた。
そしてまたベッドに戻った。

2007-03-08

朝寝坊

やれやれ、今日もか。
まぁ今の時季は寒いからなぁ。
いつまでも暖かい布団の中でぐっすり眠っていたくなるよなぁ。
うす暗い空に向かって、煙草の煙がゆらりと昇る。
少しばかり風が出てきた。まだまだ朝は寒い。
上着のチャックを上げて、マフラーを巻き直す。
どのくらい待てばいいだろうなぁ。
水平線が一望出来る、港の桟橋で、遠くに架かる大きな橋を眺める。
水平線の少し上には雲がどかんと陣取っている。
反対方向では、赤い月がビルの向こうにゆっくり沈んでいくところだった。
ふと見上げた空が白み始めた。
お。
大きな橋の方、橋の奥から、あいつが顔を出し始めた。
やっとお目覚めか。
この時季は寒いから、仕方ないよな。
三脚にセットした一眼レフを覗き込む。
まだ寝ぼけ眼のようだが、こんな瞬間が結構イカしてる。
「おはよーさん」
あいつに向かって、シャッターを切った。

2007-03-07

ぬりえ

「今日はみんなでぬりえをしますよー。みんなはどこの国が好きかなー?」
今日はクラスメイト全員で、国の名前とかを知ってもらいながら、ぬりえをする。そんな授業。
真っ白い大きな紙に、黒い線で描かれた世界地図。
6畳ほどの大きな世界地図を目の前に、子供達は歓声をあげていた。
みんなはまだ小学2年生で、もちろんどのあたりにどんな国があるかなんて知らない。そこで地図帳を使いながら、見つけた国に好きな色を塗らせる。
昨日遅くまで描きながら、へぇ、こんな国あるんだーと、教えるはずの私も子供みたいに地図帳にお世話になった。
みんなきゃあきゃあ大騒ぎしながら、クレヨンで色を塗っていく。
すごいな。真っ白な世界がどんどん賑やかになっていく。
最初、子供達は地図帳で分けるために塗ってあった色を選んだりしていたが、
「好きな色でいいんだよ」
というと、ただでさえカラフルになってきていた世界地図はだんだんと騒がしくなっていく。
アメリカ合衆国には、あの国旗のような星がいっぱい飛んで、アフリカ大陸にはライオンやゾウやキリンが遊んでいる。
中国は最初真っ赤に塗られていたが、誰かがその上から黄色いクレヨンで万里の長城みたいな線を引いていた。
オーストラリアにはカンガルー、南極大陸にはペンギンが。
ぬりえのはずが、いつのまにかおえかき大会。
でもみんなが笑顔で、楽しそうだ。
みんなが色んな国を楽しくしている中で、ひとりの男の子が黙々と日本に色を塗っていた。
「マサくんは日本がすきなの?」
「うん!」
日本も他の国に負けないくらい、鮮やかな国になっていて、びっくりした。
「マサくん。マサくんの中では日本はこんなにカラフルなの?」
「うん!
あのね、ちょっと前にね、おじいちゃんに昔の日本の写真を見せてもらったんだ。
そしたらね、すごいんだよ。
ピンク色の花が咲いたり、黄色の花が咲いたり、木の葉っぱが真っ赤になったりしてたんだ」
「…そっか。いいなぁ。先生も昔の日本の写真、みたいなぁ」
「じゃあ今度おじいちゃんに借りてくる!」
マサくんはにっこり笑うと、ピンク色のクレヨンで、今はもう見られなくなった『サクラ』の絵を描き始めた。
日本に四季がやってこなくなって、もうどのくらい経つのだろう。
灰色に煙る空が窓から見える。
マサくんが持ってくると言う昔の日本の写真が、とても楽しみだ。

2007-03-06

傲慢

実は、君は誰よりも傲慢である。
君より知識がない者がいると知っている時点。
君より絵の上手い人間がいると知っている時点。
君より駆け足の遅い人間がいると知っている時点。
君がそれらは食べる物と知っている時点。
君の育った環境が貧しいと知っている時点。
その時の君は傲慢である。
そして、それらの時に傲慢であると知っている時点で、傲慢なのである。

2007-03-05

黒い羊小屋

二次創作では「くろひつじ」名義で活動しています。

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