短編小説/ショートショート

ナマケモノ

奴らは大変なナマケモノ。
生き物が一番やらなきゃいけない仕事って何か知ってる?
それは地球を磨くこと。
それは地球を元気にすること。
頭の良い奴らは、自分達が楽に生きる方法ばかり考えて、仕事をしないんだ。
せっかくの知恵を、地球の為に使ってはくれないんだ。
お陰で地球は傷だらけ。
泣いてる事を知らないんだ。
ぼけてる事を知らないんだ。
なまけものの何処がナマケモノ?
奴らよりよっぽど働き者だよ。

2007-03-04

恋月

彼は生まれ変わる度に恋をする。もしかしたら恋をするために生まれるのかもしれない。
なんでもない友人、特別な感情のない友人に恋をして、少しずつ思いを膨らませていく。
毎日毎日少しずつ、思いが増えていく。
気持ちが溢れそうになると、彼はしっかり告白をする。
しかし彼は成功しようがしまいが、告白の後に思いが冷めていく。
毎日毎日少しずつ、思いが萎んでいく。
思いがすっかり無くなった頃、彼は死んでしまう。
そしてまた、恋をする為に生まれる。
夜の太陽は、昼間の太陽並に情熱的だ。

2007-03-02

「行った方がいいよ、健康診断」
周りは僕にやたらとそう煩く言う。
うるさいなぁ。
そう思いながら、僕はケーキに手を伸ばす。
たくさんの食の有り難さを噛み締める事の何がいけないんだい?
世の中間違ってるよ。
食べた物を吐き出してまで痩せる事の方が罰当たり。
そして今日も僕は大きくてチャーミングな身体を揺らしながら帰路に着く。
帰ったら、何を食べよう。
最近焼肉食べてないなぁ。よし、焼肉にしよう。
家に帰り着く前に、スーパーに寄った。
すると真っ暗なスーパーの入口に「棚卸しのためお休み」の貼紙。
うーん、しょうがない。
普段使わない商店街へと足を向けた。
精肉店を見つけて入ると、「もう今日の分終わっちゃったんだ」とお店の人。
う~ん、困ったな。
家に何かあったかな。
トボトボと帰宅して、真っ先に冷蔵庫に向かう。
4人以上家族サイズの冷蔵庫には、適度な野菜と飲み物ばかり。
くそぅ、肉がない。
仕方ないので着替えてからまた出掛けた。
家で食べれないなら食べに行けばいい。
外で食べれば片付けも気にしなくていいしね。
るんるん気分で行き着けの焼肉屋に行ったが、明かりが点いていない。
入り口には「店内清掃のため休みます」の貼紙。
なんてツイてない!
近くを歩き回ったが、焼肉屋らしいものは見当たらない。
肉。
肉が食べたい。
ぐるぐるきゅるきゅる、腹は空腹を訴えるだけ。
ふとさすったお腹の弛み具合を見る。
肉、此処にあるじゃん。
野菜は家に沢山あったなぁ。
なんだ、大丈夫じゃん。
僕はるんるん気分で家に向かった。

2007-03-01

横断歩道

渡りたくて、何度も、足を運ぶんだけど、ね。
消えてしまうんだ、何度も。
いつになったら渡れるかな。
同級生だったみんなは、いつの間にか大きくなって、もう中学生?高校生?
渡りたいんだ、横断歩道の向こう側に。
そして、小学校で勉強するの。
そして、大きくなったら幼稚園の先生になりたい。
だからみんなと一緒に渡るんだけど、私、気付いたら元の場所にいるの。
渡れないの。
気付いたら、みんな大きくなってる。
大きくなりたいのに。
渡りたいのに。
消えてしまうんだ、何度も。
渡りたくて、何度も、足を運ぶんだけど、ね。

2007-02-28

世界にはたくさんの窓があることに気付いた。
その窓達には鍵がかかっていたけれど、私のてのひらには何でも開ける鍵があった。
だから、いつでも窓を開けて、身を乗り出して覗く事ができる。
窓の外に出ることもできるし、また元の場所から別の窓の外へ行く事も出来る。
窓は色んな形をしていて、面白い。
ただ、窓の外に出るときに足をぶつけないかちょっと心配。
元の場所に戻れなかったら、嫌だな。
私は鍵を握りしめて、ただ窓を見つめてる。

2007-02-27

pollenphobia

鼻がむず痒い。
そろそろ花粉の飛ぶ季節。
この頃になるといつも思うんだ。
花粉症にならない奴らは大丈夫なのかな?って。
花粉ってさ植物の種みたいなもんだろ?
正確にはおしべなんだけどさ。
おしべである花粉とめしべがくっついたら、種になるわけだ。
種はいつか芽を出して双葉になって大きくなるわけだ。
考えてみろよ。
花粉を吸い込んでも平気って事は、体内にもしめしべがなんかの間違いで入ってて、くっついて種になって芽を出す確率が上がるって事だ。
花粉症の奴らはそんな恐怖から逃れてるわけだ。
くしゃみや鼻水や涙で洗い流してるわけだし。
俺はまだ鼻がむず痒いだけだけど、心配だ。
何せ人間の身体は余計な栄養ばかりだからな。
おしべである花粉とめしべがくっついた日には、あっというまに芽が出て大きくなって、身体を突き破るに違いない。
そう考えたら、背筋がゾクゾクしてきた。
うわぁ、花粉こえー。

2007-02-24

突いた先

可笑しな奴がいた。
指を指して笑った。
可笑しな奴がいた。
指先で突いてみた。
可笑しな奴がいた。
振り返りやがった。
可笑しな奴がいた。
それは自分だった。

2007-02-21

美術館

普通、美術館と言うと、そこそこに名の知れた画家の作品や、何かしらのコンクール受賞作を展示しているものだ。
しかし、私の勤めている美術館は、少し変わっている。
まず、作者の名前がなく、誰が作成したのかは分からない。
そして、展示されている物の形態がおかしい。
ついでに言うと、此処の作品はいつの間にか増えたり減ったりしていて、いったいいつ搬入されたのかも分からないのだ。
あ、私の仕事は単なる入り口の受付だから、知らなくてもしょうがないかな、と思っているんだけど、私以外の職員は館長ぐらいで、搬入とか展示をしてる様子を見た事ない。
ある日館長に「新作が増えているから、たまには見ておいで」と言われて、館内を見て回る事にした。
それにしても、芸術とはよく分からないなぁと思うものばかりが展示されている。
一番怖かったのは、沢山の屍体の山の上に、花が一輪咲いている様子を形にした物。
大きな四角いガラスケースの中に、今にも腐臭が漂ってきそうなリアルな人形が幾重にも重なっていて、その一番てっぺんにぽつんと綺麗な花。
屍体の人形が多すぎて、てっぺんがよく見えなかったので、何の花なのかは分からなかった。
作品タイトルは「平和」だって。
他にも、男女がお互いの首に首輪を付け、お互いの首輪から伸びた鎖を持ち、反対の手にナイフを持った彫像とか、携帯電話を人間サイズに大きくした物が歩いてる街の模型とか、もっと色々よく分からないものがいっぱいあった。
それにしても、いったいこれらはいつこの美術館に運ばれてくるのか。
まぁ、考えてもしょうがないので、私はぐるっと館内を一周してから、仕事に戻った。

2007-02-19

携帯ストラップ

私の携帯にはいくつかの携帯ストラップがくっついてる。
でも、一つだけ、ストラップの紐だけで先が何もないのがあるの。
大事なものだから落ちないようにしてるとか、そういうんじゃないの。
このストラップの紐の先には、本当はあの人がくっついてるの。
でも、人間は生きていくのに働かなきゃでしょ?
だから私の携帯にはぶら下がってないの。
ただそれだけのことよ。

2007-02-17

死神事情

人間の目には見えていないだろうが、死神というやつは実はあちこちにいる。
例えば、今貴方が立っているその電車の車両の天井に、死神は鎌を抱えて張り付いている。
知っているだろうか、死神たる奴らには実は色が与えられていることを。
よくホラー映画なんかに登場する死神は黒いマントを纏っているが、あれは死神の一種類でしかない。
黒いマントの死神は汚い魂を刈る奴。
何故黒いかって?
そりゃあ刈り取る魂が汚いからさ。黒い色は汚れが目立たないからね。
他にも動物の魂を刈る緑マントや、物の魂を刈る紫マントなんてのもいる。
そして、俺のように綺麗な魂を刈り取る死神のマントは白い。
しかしながら、黒いマントの死神=死神 とイメージが固まっているように、白いマントの死神は少ない上に、暇だ。
この世の中ってやつは汚い魂ばかりが蔓延っていて、黒いマントの奴らは大忙し。白いマントの奴らも人手が足りない時は黒いマントを借りて仕事をする。
まったくこの世って奴は、こまった世界だ。
ついこの間、あんまり暇だから、長期休暇でも取ってバカンスに行こうとしてたら、仕事が入った。
どんな奴かと思ったら、自分の信念を貫いて、他人を助けて死んじまった人間だった。
意外とこの世って奴も捨てたもんじゃないなぁと思って、バカンスは取りやめた。
またいつ仕事が入るか判らない。
でも、出来れば俺は、そんないい奴らがこの世にいるのなら、あんまり仕事したくないけどね。

2007-02-14

黒い羊小屋

二次創作では「くろひつじ」名義で活動しています。

【詳細はこちら】

WEB拍手

感想などは以下のWEB拍手からお願いします。

【WEB拍手ボタン】

→拍手の返信はこちら