短編小説/ショートショート

てのひらセカイ

てのひらにもセカイがあります。
指先にもセカイがあります。
空の果てにもセカイがあります。
夢の中にもセカイがあります。
唇の上にもセカイがあります。
土踏まずのくぼみにもセカイがあります。
さて、君は何処のセカイにいる?
セカイは境目があると思われているようだが、実はない。
その境目とは、結局その自分なりの愚かなモノサシでもって、線を引く道具ではないモノサシで引いた線の事を言う。
セカイはセカイである。
愚かな者よ、その手に握るモノサシなど捨てなさい。
境目など、破壊してしまいなさい。
セカイが狭いと感じているのは、君の脳だけで、実際のセカイはハカリしれなく広いのである。
そう、君は脳の中で、狭いと感じたセカイにいるだけに過ぎない。
破壊しなさい。
その愚かな脳で作り上げた境目など。
セカイはセカイである。

2007-02-13

ゆめくい

彼女はとても眠るのが好きらしい。
僕は何度か彼女の前に現れたけど、彼女が瞳を開いて笑っている様子は一度も見たことがないんだ。
真っ白な服を着て、真っ白なベットの上で彼女はいつも眠っている。
夢を食べる獏の僕は、いつも彼女の夢をご馳走になる。
彼女の夢はすごいんだ。
とっても血腥くて、恐怖と絶望がとっても素敵なハーモニーを奏でている。
そう、とても可愛らしい顔からは想像出来ないくらいの、真っ黒な味。
そうゆうのが好きな僕は、とても嬉しかった。
ある日、彼女の元へゆくと、彼女が瞳を開いていた。
彼女の目は真っ黒で、何もなかった。空っぽだった。
「あなたが、私の夢を食べてくれているのね。いつもありがとう」
彼女の身体をよく見たら、包帯だらけだった。
うっすらと血の色が滲んでいた。
「これからもご馳走になるよ」
僕はそう言って、瞳を閉じた彼女の夢を食べる。
これからも彼女の夢を食べ続けよう。
その日の夢は少しだけしょっぱくなってしまった。

2007-02-12

傾いた天秤

天秤は、全ての同等を示すのにとても分かりやすい道具だ。
ちょうど良いサイズの天秤があったので、私は平和と言う文字を右皿に、地球を左皿に置いてみた。
困った事に、地球の方が重すぎて、左の方へ天秤が傾いた。
思案した私は、戦争と言う文字を右皿に置いてみた。
ところが天秤は、今度はゆっくりと右の方へと傾いた。
この天秤を平行にするためにはどうしたらいいものか。
私は未だに考えているところである。

2007-02-07

ぼくは ながいながい いっぽんみちをひたすらはしっていた
なにかにおいかけられるように
なにかにあせらされるように
あるひ とつぜんめのまえに おおきなかべがあらわれた
じゃまなのでおしてみたが びくともしない
こわしてやろうと たいあたりしたが うごかない
けりとばしてみたが あしがいたくなるだけだった
こまった
はしらなきゃ すすまなきゃ
いっしょうけんめいうごかそうとしたがむりだった
しかたがないのでぼくはごはんをたべた
しかたがないのでよこになった
しかたがないのでねむった
ぐっすりねむってめざめると めのまえのかべがたっていた
てあしをにょきっとはやして つるつるのそくめんにめだまをひらいていた
かべはぼくをみおろしていた
ぼくはいった
「なんでぼくのじゃまをするんだ」
かべはなにもいわなかった なぜならかべにはくちがないから
「じゃましやがって」
かべをなんどもけりつけた
かべがのそりのそりとみちをあけたので ぼくはまたはしりだした
ごはんをたべたから たくさんはしれた
よくねむったから あしがかるかった
ぼくはまたすすんでいく
こんどまたかべにであったら あやまろうとおもった
入院中のベットの上で、僕はそんな本を読んでいた。
妹が見舞いに来たときに持ってきた本だ。
仕事に行く途中、階段から落ちて足の骨を折った。
普段の忙しさにかまけて、食事や睡眠を疎かにした罰に違いない。
仕方がないので、僕は本を抱きしめて眠ることにした。

2007-02-06

コトバ集め

僕は世界の音という物を知らない。
言葉がどんな音で聞こえるのか、音楽がどんなものか知らない。
しかし、僕にはその人の発する言葉が美しいものかそうでないか、判る。
人は皆、言葉を発する時、羽を吐き出す。
美しい言葉なら純白に輝き、そうでなければ薄暗く、黒ずんでいる。
普通の人には見えていないようだ。
僕はその羽を「言羽」と呼んだ。
言羽は人の口から何枚か吐き出され、地面に落ちる前に消え去る。
たまに消えないで落ちているものもあり、僕はそれを拾い、ガラス瓶に集める事を趣味にしていた。
多分普通の人から見たら、空っぽのガラス瓶に空気を入れているようにしか見えないだろう。
ある日僕は公園で、それそれは綺麗で普通のものよりも少し変わった形の羽を拾った。
あまりにも綺麗で、僕はガラス瓶に大事にしまった。
あの言羽は誰が零したモノだろう。
ガラス瓶の中の羽を見つめて、僕は想像する。
その数カ月後、僕はあの綺麗な言羽の吐き出した主に出会う。
その主は女性で、テレビの中で歌っていた。あの不思議な形の羽を零しながら。
それそれは美しく、のびのびとした表情で歌う女性だった。
僕は喜んだ。
あんなにも美しい羽を零す人を見つけられたから。
しかしながら、よくよく見ていると、そのブラウン管の向こうで吐き出されている羽に、僕が拾った羽の美しさは見受けられなかった。
美しい、けれど、ガラス瓶の中のモノとは比べたくもないくらい、薄汚れていた。
彼女の羽を汚したのは、何であろうか。
僕はガラス瓶を抱き締めながら、涙を零す。
いつか、彼女に会うことが叶うなら、この瓶を、この羽を、彼女に返そう。
それで少しでも、彼女の吐き出す言羽が輝きを取り戻すなら。

2007-02-05

コトリの飼い方

「ねぇ、一つ頼みたいことがあるの」
付き合っている彼女がそう言った。
「私、明日から海外に仕事に行くのだけど、私のいない間、私の代わりにコトリの世話をしてくれないかしら?」
「コトリ?君飼っていたっけ?」
「えぇ。いつも一緒にいるの。淋しがり屋だから。でも仕事だし、コトリに構ってあげられないから」
「え、いつも一緒?」
「えぇ。今、私の肩にいるの。ほら、私のいない間、彼の言うことを聞くのよ?」
肩に向かってそう彼女が言う。
「え、ちょっと待って」
「今、貴方の肩に乗ってるでしょ?よろしくね」
彼女はそう言って帰ってしまった。
困った。
僕には彼女のいうコトリが見えていない。
どう世話をしたらいいんだ。
彼女が仕事で海外に行ってしまった3ヵ月間、彼女に頼まれたコトリの事、もしコトリが死んでしまっていたら彼女が泣いてしまうんじゃないかという事、そんなことを考えながら過ごした。
たまに電話でコトリの事を聞かれたが、元気だよ、としか答えられなかった。
そして、彼女が仕事から帰ってきた。
僕は彼女を空港まで迎えに行った。
「おかえり」
「ただいま」
「あ、あのさ」
「なに?」
「コ、コトリの事なんだけど…」
「うん」
「僕には最初からコトリなんて見えてないんだ。だから、その…」
僕がそう言うと、彼女はクスクス笑った。
「見えてるのに、気付いてないだけよ」
「え?」
「私の名前は?」
「ナルミ」
「漢字、思い出して」
「鳴海。…あ」
「ね?鳥がいるでしょう?」
彼女が笑う。
あぁ、そういうことか。
僕も一緒になって笑った。

2007-02-04

おにさんこちら

少し悩んでいることがある。
それは我が家での出来事。
大きめの部屋に一人暮ししているのだが、どうやら住人が僕以外にもいるようなのだ。
部屋でくつろいでいると突然浴室からシャワーの音がしたり、トイレから出て電気を消して暫くするとまた電気が点いたり、キッチンに立っていると靴箱を開け閉めする音がして、玄関を見ると靴が散乱していたり。
自分の頭がおかしくなったのか、と疑ったが、実際問題異常は起き続けている。
そんなある日、リビングで食事をとっていたらベットの上ではしゃぐような声がしたのだ。
微かだか、確かに女の子の声がする。
今までの異常は物を通して起こる事がほとんどだったが、第三者の存在が明白であるような事は初めてだった。
気になってしょうがなく、ベットのある部屋を謎の第三者に気付かれぬよう、こっそり覗いた。
いた。
黒い髪の、白い飾りのないワンピースを着た、中学生くらいの少女。
やたら可笑しそうに、ベットの上で跳びはねている。
「だ、誰だ!お前!」
反射的に声が出た。
その声に、少女はぴたりと動きを止め、真っ黒い瞳をこちらに向けた。
光のない、少女の瞳が異様に恐ろしかった。
目が合ったまま、動けない。怖い。
無表情の少女の顔に、少しずつ変化が現れる。
目を細め、口端をつりあげ、少女が微笑む。そして、
「見つかっちゃった」
透き通るような声。嬉しさを含んだ音。
「次は私の番ね」
そう言った少女の姿が見えなくなる。
「何の事だよ!」
慌てて叫んだ。
しかし少女の姿はもう見えない。
何の事だか、さっぱり分からない。
食事の続きを取ろうとリビングに戻ると、僕は絶句した。
リビングのテーブルの上の食事を、先程の少女が食べている。
そして、その周りをぐるりと囲むように、7~8人の人間が立っていた。
僕は叫び声を上げた。
その声に、少女以外が反応してこちらを向いた。
「うるさいぞ」
「まったくだ」
「馬鹿なやつだな」
「状況解ってないんじゃない?」
「あぁ、そうか」
7~8人の人間はこそこそ相談すると、僕の方を向いた。
「隠れ鬼さ。今まではあんたの鬼。今はその子が鬼」
「みんな鬼になりたいのさ」
「だからみんな騒ぐんだ」
「それだけさ」
「そう、それだけさ」

2007-02-03

問題。その2

さて、問題です。
それはとても穏やかな生き物です。
それはとても厳しい生き物です。
それはとても優しい生き物です。
それはとても大きな生き物です。
それはとても小さな生き物です。
それは色々なものを生み出す事が出来ます。
それは色々なものを受け止める事が出来ます。
それは例え貴方に刺されても微笑んでいるでしよう。
それは例え貴方に親切にされても知らないふりをしているでしょう。
それとは一体何でしょう?
ヒント:
最近怒りっぽいです。
最近汗ばかり流しています。
最近少しボケてきているようです。

2007-02-02

お喋りユビキタス

「やぁこんにちわ。はじめまして」
『はじめまして~』
〔おはつです〕
「皆さんよくいらっしゃるんですか」
『いるいる。暇な時間はたいていいるよ』
〔自分は今日で3回目くらいです〕
『タメ語でいいよ~>all』
「あは、ついつい(汗」
〔ごめんなさい(>_<)〕 『**は普段敬語なの?』「ですよ~。××さんもそんな感じですね?」 〔呼びタメでいいですよ>**<同じ感じですね苦笑〕 『えー二人とも大変そぉ。○○は堪えらんないなぁ。強要されてんの?』 〔僕は好きで使うよ〕 「…自分は強要されてる…」 『え、なにイジメ?!』 「…近いかなぁ」 〔いや、それは絶対イジメだよ!〕 『イジメとかマジひどい。ここでは全然タメでOKだかんね!』 「ありがとう(^^)」 〔イジメひどいな。何、クラスメイトとか?〕 「そう。クラス仕切ってる奴」 『うっわぁ、大変じゃん!○○は**の味方だからね!』 〔僕も味方だよ(^-^)〕 「ありがとう、心強いよ」 小さな窓の中は、いつでも暖かい。 熱すぎず、寒すぎず、ちょうど良い。 僕の親指はいつでもお喋り。 小さな世界にくらい、居場所があったっていいでしょう?

2007-02-01

問題。

さて、問題です。
貴方のあちこちに張り付いている物があります。
それは何でしょうか?
貴方が周りの人に貼付けている物があります。
それは何でしょうか?
周りの人が貴方に貼付けている物があります。
それは何でしょうか?
貴方が知らない誰かに貼付けている物があります。
それは何でしょうか?
周りの人が知らない誰かに貼付けている物があります。
それは何でしょうか?
ヒント:
それは周りの人次第で剥がすことが出来ます。
それは貴方の努力次第で剥がすことが出来ます。
それは貴方と周りの人次第で変わります。
それはささやかなきっかけで生まれます。
そしてささやかなきっかけで剥がれます。
この問題、貴方はわかりますか?

2007-01-31

黒い羊小屋

二次創作では「くろひつじ」名義で活動しています。

【詳細はこちら】

WEB拍手

感想などは以下のWEB拍手からお願いします。

【WEB拍手ボタン】

→拍手の返信はこちら