カラクリ

ショートショート短編小説

計11名もの男女を殺傷した通り魔が警察の徹底した調査と努力により、捕まった。
犯人はおっとりとした顔付きの垂れ目の女性であったが、捕まえた当初、「悪魔が私に命令をするの!」と喚きちらしていたそうだ。
精神鑑定や犯行当時の責任能力について様々な情報が飛び交い、メディアはこぞってこの事件を取り上げた。
11名の死傷者の中には中学生もおり、世論の流れは「死刑に値する有罪」であった。
しかし、最初の判決では「無罪」が確定。
たちどころにメディアが盛り上げ、裁判批判等で新聞各紙が仰々しく掲げるかと思いきや、まるで熱がすっかり冷めてしまったかのように、事件についての情報が消えた。
当初は様々などよめきが沸き起こったが、メディアが取り上げなくなったため、年月はあっと言う間に事件を風化した。
これはメディアに人心が右往左往と踊らされている事がよく分かる良い事例でもある。
かくして、事件より半世紀経ったある日、数枚の法廷画が発見される。
それは、その犯人の裁判の様子を描いたものだったが、犯人の部分は何故か赤いペンでぐちゃぐちゃになっていて、どのような姿かはっきりとしない。
その法廷画を描いた人物は、
「見たくなかった。描きたくなかった」
と告白。
彼の元妻によると、彼はその裁判から帰って来た夜、妻が大事にコレクションしていた人形達を半狂乱になりながら叩き壊したらしい。
それが原因で二人は別れたそうだが、元妻はその時の様子をこのように証言している。
「彼はまるで人形を悪魔を見るような目で見つめていたわ。すっかり怯えているようだった。小さい犬が大きな犬を見て吠えるような、そんな光景だったわ」
犯人は無罪放免となったが、何処で何をしているかは、定かではない。

2007-03-09

黒い羊小屋

二次創作では「くろひつじ」名義で活動しています。

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