欠けた月が浮かぶ空の下

ショートショート短編小説

冷たい空気。白い吐息。震える星と欠けた月。
「毎日飽きないかい?そんな空の上は」
『飽きないよ。
見る度に地上は様変わりしているし、
毎日違う星が話し掛ける。
刺激的な毎日さ』
「そうか。
僕は常々、空に浮かんだ君は一人ぼっちで、
僕と同じつまらない日々を送っているものだと思っていたんだが」
『ふふ。
それはそうだろうね。
君達から見たら、僕が浮かぶ空には他の誰もいないように見えるかもしれない。
最初は僕もそうだった。
自分の光で、周りに気付かないでいたんだ。
気付いてからは楽しい日々さ。
君も多分、自分で見えなくしているだけさ。
しっかり周りを見てごらん。目を凝らして、よーく見るんだ』
周りをぐるりと見渡した。
こんなことして、何に気付けるのか。
「誰もいないよ」
『そうじゃない。そうじゃないよ』
「どうしたらいいのさ。
親しい顔を思い浮かべたところで、誰もいないよ」
『君は大きな勘違いをしている。
例えば、僕と君との距離は計り知れない距離だろう。だが君は僕という存在に気付き会話している。
例えば、僕と星達の距離は計り知れない距離だろう。だが僕は星達の存在に気付き会話している。
そういうことさ』
「さっぱり分からない」
『そうだろう。
気付かない君はそうだろう。
だが気付いた時、君の言うつまらない日々は僕の言う刺激的な日々になっているだろうよ』
月が遠くなっていく。
しかし彼の放つ光はいつまでも暗い空を照らす。
地平線が白むまで僕は欠けた月の言葉に頭を捻ることになる。
答えに気付いた時、月はすっかり地平線の向こうへ行ってしまった。
また今夜、彼が現れたら話してみることにしよう。

2007-01-14

黒い羊小屋

二次創作では「くろひつじ」名義で活動しています。

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